デビルマンとして生きる男
カラオケは好きですか?
私には得意なことがない。
逆に、苦手なことなら無数にある。
中でも「歌を歌うこと」は壊滅的だ。
私のリズム感と音程は、二人三脚をしていない。
お互い「追いつけ追い越せ」のデッドヒート状態なのだ。
リズムが先に爆走し、焦った音程が急追いかけ、結果として声が盛大に裏返る。
歌いながら自分自身が引くレベルである。
別に歌が嫌いなわけではない。むしろ好きだ。
ただ、職場の飲み会や子供関係の集まりでカラオケに行くと、私は100%の確率で爆死する。
原因は明白。「かっこつけた選曲」だ。
普段の自分とは掛け離れたスタイルの曲を入れてしまう。
たとえば、湘南乃風。
言っておくが、私はドレッドヘアではない。
どちらかといえば、おとなしいマッシュヘアだ。
そもそもリズム感ゼロの奴にラップなど歌えるわけがないのだ。
たとえば、緑黄色社会。
言っておくが、私は男だ。
高音が出るはずもない。
頑張っても、上ずって裏返る恥ずかしい音しか出ないのだ。
Mela! Mela!燃え上がる気持ちはあるが花になっていかない。
それなのに、デンモクを操作する時の私は
最強の自分をイメージしている。
完璧に歌い上げ、なんなら廊下を歩く人が
「え、プロ来てる?」と足を止める未来まで
想定している。
だから、前奏までが私の最高潮だ。
「お! 意外な曲いけるんだね!」
ギャラリーの歓声。高まる期待。
……しかし、曲開始3秒で、みんなの視線は
静かにデンモクへと落ちる。
さっきまでの盛り上がりは幻だったかのように、
私の熱唱は「隣の部屋から漏れてくるBGM」と同等の扱いを受ける。
そりゃそうだ。
勝手に自分でハードルを爆上げして
勝手に盛大にコケているのだ。
気まずくて見ていられないだろう。
後に引けない私は、選曲ミスを痛感しながらも最後まで歌い切り、そっとマイクを置く。
そして、精一杯の虚勢を張るのだ。
「いや〜、久々だったから声出なかったわ〜!!」
そんな私にも、一曲だけ絶対に裏切らない持ち歌がある。
『デビルマンのうた』だ。
一緒に行く人達とは世代が違いすぎる。
私は36歳。
放送は50年以上前だ。
さすがにこの曲を1曲目からぶち込む勇気はない。
だから私は、カッコつけて惨敗し、心がポッキリ折れたあとに、腹をくくってこれを入れる。
裏切り者の名を受けて〜
すべてを捨てて〜 戦う男〜〜
デビルマンのうた
そう。
私はかっこつける自分をすべて捨てて、
デビルマンになるのだ。


船橋のミュージックバーに、デビルマンのコスプレをしたオッサンがたまに来るらしい
へ?
デビルマン?
逆に歌えるのが凄い🐽